VOL.86 体当たりの研究⁉
コラム
『マテリア・メディカ』は西洋の植物薬学の古典と言われていますが、
中国には最古の薬草学書とされる『神農本草経』があります。
“神農”とは4000〜5000年前の古代中国の神のこと。
身近な草木の薬効を調べるために自分の体を使って確かめ、何度も毒にあたっては薬草の力で蘇った
と言われている神さまです。
この神農にあやかって名付けられたとされるのが『神農本草経』です。
原本は散失し、編者も成立年代も定かではないようですが、
5世紀末に陶弘景(456〜536年)によって『神農本草経集注』として再編されました。
『神農本草経』の大きな特徴はふたつ
「一年の日数と同じ365種類の植物・動物・鉱物が薬として集録されている」
「薬効の強さによって、下薬(125種類)・中薬(120種類)・上薬(120種類)に分類されている」
これって、漢方薬の世界でよく目にする分類ですよね。
やがて中医学(中国の伝統医学)として確立し、まさに東洋医学が発展する大きなきっかけとなった一冊なのです。
「自分の舌で舐め、毒に当たり、
良い悪いなどの効果を確かめる」
など体当たりの研究をした先人たちがいたからこそ、現在の医学が発達し、
わたしたちの健やかさが保たれているのですから、
本当に頭が下がる思いですよね。
次回はアロマの歴史・中世編をご紹介いたします。お楽しみに!
(島みるを)
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