VOL.92 床屋?外科医?
コラム
前回ご紹介した、ルネサンスの『大航海時代』により、近世ヨーロッパには世界中のさまざまなスパイスや香料、香辛料がもたされました。
同時に、薬用植物の書物も発展。植物に関する書物の普及にともない
『ハーバリスト』と呼ばれる人たちが続々と登場しました。
ハーバリストとは…
「植物採集家、本草家」
「ハーブ(薬草)を用いて病気の治療などを行う専門家、または職業」
つまり「ハーブの専門家・研究家・薬剤師」という感じでしょうか。
とくにイギリスには多くのハーバリストが誕生しました。
そのひとり、ジョン・ジェラードを今回はご紹介いたします。
彼はイギリス植物学の基礎を作ったハーバリストです。
ジョン・ジェラードはイギリスの植物学者であり、また床屋外科でもありました。
……って、床屋で外科?
当時は、床屋さんが医療的な手術も行っていたというのです。
床屋さんはハサミやカミソリなどの刃物を熟練に扱うからでしょうか……。
そんな彼、ヨーロッパに入ってくるようになったさまざまな植物に興味を持つようになり、のちに自宅があるロンドンのホルボーンに自分の薬草園を開きました。
そこに珍しい植物を集めて栽培・研究を重ねたと言われています。
それだけにとどまらず、植物の知識を増やすために船医となって世界を旅した……という逸話も残されているようです。
また、1577年には、エリザベス女王の顧問だったウィリアムセシルの庭園の責任者になりました。
名門・ケンブリッジ大学に植物園の設立も提案したのもジョン・ジェラードです。
彼の著書『The Herball(本草書)』はイギリスはもちろん、
ヨーロッパにおける本草学の代表作とされています。
しかし床屋さんから植物学者、医者までやってのけるなんて、すごい人ですよね。
友人の美容師さんと話すと、
彼らは薬品を使用したり
人の体(髪や頭皮)に触れるために
医学や科学の知識が必要なので、
「ヒトの体のしくみ」に結構詳しいんですよね。
なんだか納得のアロマの歴史ひとこまでした。
では次回もイギリスで活躍したハーバリストをご紹介いたします。
お楽しみに。
(島みるを)
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